Beauty & Chestnut

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ベターホーム シェフに習う④ ヴェネト州

シェフに習うシリーズも早いもので4回目である。ベターホームの通常のレッスンは前半と後半に分けて2回のデモンストレーションが行われるが、このレッスンは全メニューのデモンストレーションを1回で行うので最初は戸惑ったが、ようやく慣れてきた。リグーリア州ピエモンテ州ロンバルディア州に続いてヴェネト州だ。今回のレッスンを受けてようやく気が付いたのだが、今シーズンのレッスンは北イタリアに絞っているとの事。来シーズンは南イタリアなので、日程が合えば継続して全州制覇を目指したい。


さて、ヴェネト州と言えばソアーヴェである。これ以外にパッと出てこないのでソムリエ教本を紐解く。なんとイタリアの中でもワイン大産地として位置付けされており、ソアーヴェ以外にもヴァルポリチェッラ、レチョート・ディ・ソアーヴェ、アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラなど幅広いジャンルのワインが作られている。毎年国際ワイン見本市がヴェローナで開催されていることから「イタリアワインの首都」と考えられているそうだ。グラッパなどの蒸留酒も盛ん。経済は第二次大戦後の高度経済成長の波に乗るまで非常に貧しく、1870年から1970年の100年間で300万もの人が移民となった。工業が発達するにつれて人口が増え、今では農業、畜産が盛んである。そんなヴェネト州の今回のメニューは「ポレンタのカロッツァ」「グリンピースのスープリゾット”リージィ エ ビージィ”」「イワシのパン粉焼き」の3皿。


ポレンタのカロッツァ

イタリアンレストランは結構行ったつもりだったが、ポレンタというのは初めて知った。ポレンタを練り上げる作業から始まって、どんなものに仕上がるのだろうか、と楽しみに拝見。ポレンタは北イタリアでポピュラーな食べ物で、一言で言えばコーン版マッシュポテトである。詳しい工程は省くが、非常に食感は軽いがしっかりとお腹を満たしてくれる一品だ。味はわずかにトウモロコシの風味があるだけで、控えめで線が細い。何かに添えられて出されることが多いそう。今回は茹でたポレンタを成形してハムやチーズを挟んで揚げた。ポレンタ粉の入手が難しいので、次に自宅で作る時は食パンを代用しようと思う。



次にイワシのパン粉焼きだ。パン粉にはハーブやドライフルーツなど様々なものを加えることもあり、非常に香り豊かで複雑な味わいだった。手間はかかるが、かける価値はあると思う。材料もスーパーで手に入るものばかりだし、イワシの開きさえどうにかなれば我が家の定番料理にしたいほど。これは酸味がキレイで、よく冷やした白ワインと合わせたいなぁ。ソーヴィニヨンブランとか、それこそソアーヴェが用意できたら間違いなく気分が高揚しそうである。



そして最後は緑色鮮やかなリゾット。ピエモンテ州の時にポルチーニリゾットを習って以来、何度も自宅で作ったので慣れたものである。スナップエンドウのペーストは少し手間がかかるが、フードプロセッサーの数少ない出番なので時間がある日には自宅でも挑戦したい。



全体像。かなりのボリュームになった。今回こそタッパー持参して持ち帰るつもりだったが、朝少しバタバタしていたので忘れてしまった。ちょっと苦しかったが美味しく完食。



こちらが先生の作品。使っているお皿が違うのもあるが、プロのセンスが光る。

ベターホーム シェフに習う③ ロンバルディア州

2021年最初のレッスンは「ミラノ風~」でお馴染みのロンバルディア州だ。ミラノと聞けば今でも真っ先にサイゼリアのミラノ風ドリアを思い出すが、私の生活圏からサイゼリアが消えて既に10年近く経っている。サイゼリアはプロシュートを頼むと一緒についてくる三角形のパン「プチフォッカ」が異様に美味しく、いつかサイクリングで良い具合に疲れた後にサイゼリアに寄ってプチフォッカを満腹になるまで食べてみたいな、と思っているが、どう実現するかは一向にめどが立たない。行こうと思えば行ける距離にはあるが、私の中でサイゼリアは頑張っていく場所ではなく、フラッと行く場所なのでそのポリシーを貫いている。フラッと行けない時は行かないのである。もし運よく徒歩5分圏内にサイゼリアが出来たら週1で行くと心に決めている。


さて、話が逸れてしまったが、3回目のレッスンはミラノで有名なロンバルディア州だ。サフランリゾットやミネストローネという鉄板を差し置いて提供されたレシピは「カタツムリ型パスタとじゃがいものチーズソース」「ミラノ風 仔牛もも肉のカツレツ」「余ったパネトーネのフレンチトースト ヨーグルトのソース」の3品。今回もワインが欲しくなるラインナップである。


タツムリ型パスタと聞いてどんな物なのか想像が付かなかったが、マカロニと貝殻パスタを足して割ったような、言われなければ絶対にカタツムリ型だとは思えない形状であった。ねじれた筒状の独特の形で、スプーンで食べることが出来そうだ。オリーブオイルにみじん切りした香味野菜をたっぷり加え、ブイヨンで味を調える。1cm角にカットしたジャガイモとの食感が楽しい。辛口でよく冷えたスプマンテと合わせたい。


セコンドはミラノ風仔牛もも肉のカツレツ。カツレツは割と得意料理である。しかし、雑に調理するとカットする時に衣がボロボロと剥がれてしまうので油断はできない。仔牛もも肉は中々スーパーで手に入らず、今までは生姜焼き用の豚人気で代用してきたが、やはり牛肉は格段に旨い。加熱している時からテンションが上がり、食べると口福なひと時を堪能できる。それはさておき、ミラノ風カツレツは粉チーズをどこで付けるかレシピによって異なる。今回は卵液の中に入れるもので、このパターンは初めてだった。普段は肉を叩いた後に粉チーズを付けて卵液、パン粉の順に仕上げている。まぁ、卵液に粉チーズを入れる方法と味が明確に違うわけでもないので、何が正解なのかは分からないが。ソースはバターと白ワイン主体。マッシュルームを添えて完成。

こちらが豚肉で作ったミラノ風カツレツ。肉は何であれ、カツレツにはルッコラとソテーした野菜が外せない。

これは軽めのサンジョベーゼと合わせたら美味しいだろうなぁ・・・。ネッビオーロでも良いかも。


ドルチェはパネトーネのフレンチトースト。パネトーネとはクリスマスシーズンにイタリアで売られる、果物が沢山入ったシフォンケーキのようなもの。たまにパン屋さんの隅で売られている。焦がさずに焼くのが難しいらしく、想定通り焦がしてしまったが味は良かった。見た目を気にしなければ、砂糖は焦がした方が香りが豊かで好みである。ミルクコーヒーが欲しくなる。

シナモンパウダーが隠し味。自宅で作った時はシナモン比率多めのガラムマサラを入れてみたが、より香ばしく仕上がった。普通に生活しているとパネトーネが余ることはまずないので、食パンやフランスパンを漬けることが多い。これも、特殊な食材を使わないのでちょっと時間がある時に何度か作った。

さて、全6回のコースもこれで半分が終わった。残り3回でどんなことを学ぶのか楽しみだ。

ベターホーム シェフに習う② ピエモンテ州

リグーリア州に続く2回目はトリノのあるピエモンテ州の料理である。ピエモンテといえばバローロバルバレスコ、アスティが真っ先に思い浮かぶが、白トリュフやポルチーニゴルゴンゾーラやバーニャカウダも有名である。この日習ったのはバーニャカウダ、ポルチーニ茸のリゾット、ココアプリンのブネの3品。特に西洋の松茸と言われるポルチーニを贅沢に使ったリゾットの香りは何とも言えない豊かな気持ちにさせてくれた。

さて、ソムリエ教本を片手にピエモンテ州について学びたい。「山の麓」を意味するピエモンテシチリアに次ぐ面積を持ち、三方を山に囲まれている。アルプスの豊かな雪解け水や河川を利用した農業も活発で、穀物や野菜、葡萄をはじめとする果実などが栽培されている。以外にもチョコレートの生産も多い。また、古い歴史があり、第二次世界大戦後の「奇跡の経済成長」を象徴する工業都市を抱える。派手な事を嫌い、親切でまじめな人が多く、ジャーナリズムや政治運動をリードしてきたという。スローフード運動発祥の地として有名であるが、そもそも何故スローフード運動が誕生したのかを調べていたらローマの広場にマクドナルドの店舗が出来た事がキッカケだったというのが興味深い。ファストフードの台頭によってイタリアの豊かな食文化が無くなってしまうという危機感がスローフード運動を生み出した。ファストフードなんて毎日は絶対に食べたくない味なのだけれども、安さと早さに関しては徹底的に合理性を追求してこそ実現できているものなので、適度な範囲でこれからも我が道を行ってほしいと思っている。こういう選択肢は人生を豊かにはしないものの、便利であるのは間違いない。スローフードのように生産から消費までこだわって作られたものも好きだし、無駄とコストを極限まで省いて食べる人の時間を節約するファストフードも有り難いので、うまい具合に共存してほしい。


料理の話に戻すと、この日の実習もかなり忙しかった。まずはブネを作り、冷やしている間にバーニャカウダとリゾットの準備を進める。ただ、切り物が多いけど複雑な作業は無いし、リゾットは応用が効くのでとても役立つ内容である。


まずはこれがブネ。

生地を何度も漉すのが滑らかな味わいにする秘訣である。アマレッティというイタリアのビスケットも生地の中に入れるのだが、このビスケットが中々入手困難だ。都内の輸入食品店を何か所か訪問したが、どこにも置いていない。通販で買えなくもないが、これだけのために商品代の倍近い送料を払うのもためらわれる。必要な材料が少ないので、使う分だけ自作しても良いかもしれない。余ったカラメルを飾りソースにして、オレンジとミントを添える。果物のカットはまだまだ練習が必要そう。


こちらがバーニャカウダ。

バーニャカウダとは「野菜のお風呂」という意味らしい。何とも可愛らしいではないか。イタリア料理でお馴染みのオリーブオイル、ガーリックに生クリームとアンチョビでコクと味を付ける。これが中々絶品で、エンドレスで野菜が摂れそうな味わいである。


そして最後にリゾット。先にスープを作っておき、バターで炒めた生米とオニオンに適宜注いていく。火加減は最初からやや強め。イタリア米を使っているからなのか、ジャポニカ米の「始めチョロチョロ」とは異なる理論である。

リゾットを作る際に大事なのは味見だと先生は仰っていた。とにかく適宜味見をすることで美味しく仕上がるらしい。生米は大きさの割に意外と火が通りにくいからなのだろうか。煮込みの中盤にポルチーニを投入し、芳醇な香りが教室中に広がる。トリュフに匹敵するぐらいの罪な香りだ。「適宜」を越えて「頻繁に」味見をしたくなる衝動との戦いであった。耐えに耐えて、終盤で1回目の味見。少し米が硬い状態で火を止め、余熱で柔らかくする。少し待って2回目の味見。うーん、アルデンテ。

面白かったのが、同じリゾットでも盛り方でトラットリア風とリストランテ風になることである。
平たいお皿に平たく盛るのがトラットリア風で、

高さのあるお皿に高く盛るのがリストランテ風。

冬に食べるなら、冷めにくそうなリストランテ風の方が良いかもしれない。


先生の盛り付け。

同じ料理でも盛り付け方ひとつで見栄えが随分異なる。こういう風に自分でも出来るようになれば良いなぁ。

来月はロンバルディア州だ。ミラノ風カツレツ(豚肉)とサフランリゾットは何度も作っているので、それ以外のレパートリーが増えるのが楽しみ。