Beauty & Chestnut

栗野美智子オフィシャルウェブサイト(笑)へようこそ。ツイッターもやってます。@Michiko_Kurino

書評、または要約

バーのある人生 (枝川 公一)

バーという空間がある。お酒を味わい、会話を楽しみ、音楽を体で感じ、時には沈黙さえも至上の癒しとなる。そう、バーの楽しみ方は無限なのだ。私の初めてのバー体験は宮崎のシェラトンホテルの(多分)最上階にあるバーで、ジャズの生演奏を週に何度かやっ…

未来から来た古代人 折口信夫 (中沢 新一)

折口信夫に関する入門書が、彼の功績の割には圧倒的に少ないと思う。柳田国男や南方熊楠の書籍はたくさん出版されていて、何か一冊読もうと思えば気軽に入門書や関連書籍を手に入れることができるが、折口信夫に関して言えば、書店によっては1冊も置かれて…

姜尚中の政治学入門 (姜 尚中)

一番最初に読んだ姜尚中の本は確か「悩む力」だ。帯に載っていた本人の写真を見て、なんとなく読んでみたくなった。マックスウェーバーや夏目漱石を引用しながら、時代は変わっても人間というのは変わっていない、存分に悩みなさい、といった内容のものだっ…

再臨のキリスト、唯一神又吉イエスは日本・世界をどうするか どのようにするか (唯一神 又吉イエス)

■入手まで なかなか手に入りにくい本だった。数多く存在するオンライン書店は全て在庫切れになっているし、中古も出回っていない。出版社に熱烈恋文(e-mail)を2通送ったけれど、音沙汰がなく、押さえ切れないパトスで電話をかけてみたら、「現在絶版です。」…

書を読んで羊を失う (鶴ケ谷 真一)

好きな香りがある。夏場の銭湯やちょっとした大型施設などに充満している業務用クーラーの、ちょっとカビ臭いあの香り。夕方近所を歩いていると、どこからともなく運ばれてくる、お惣菜の香り。お洒落なスーツ男性がつけているブルガリの香り。書店の近くま…

建築家 安藤忠雄 (安藤 忠雄)

安藤さんを、いかに語るかが最近の私のテーマである。「好き好き大好き!!」と一言で済ませるのは簡単だし、「もうね、とにかくグレートなの!!」と手放しで絶賛するのも簡単である。今日はもう少し言葉数を多くして、安藤さん並びに安藤建築について語っ…

零度のエクリチュール (ロラン・バルト)

私は家族や、大阪に住んでいた頃の友人を除いて、普段は標準語を話して生活をしている。これは別に、郷に入りては郷に従え、のような謙虚な心持からではなく、なんとなく標準語で話し始めたら、板に付いた。ここ数年は滅多に見なくなったテレビドラマやニュ…

古事記

是奇書也(笑) 日本最古の書物で、上、中、下の三つに分かれる。稗田阿礼という人物が編纂に深く関与している。一度目にしたものや耳にしたものは決して忘れない、という類まれな記憶力を有していた。名前以外、あまり記録が残っていない。アメノウズメの子孫…

青山娼館 (小池 真理子)

現代という時代、とりわけ私(1985年生まれ)ぐらいの世代の女性は、とても自由だと思う。先月誕生日を迎えて以来、母が「私があなたの年齢の頃には母親だったわよ。」と小言を言うようになったが、さほど気にならないのは性格上の問題と、先に述べた、女性の…

三酔人経綸問答 (中江兆民)

おもろい!!私は、こみ上げてくる笑いを必死に堪えながら読んだ。とにかく、痛快である。いや、明確な答えが提示されるわけではないから、”痛快”という表現は適切ではないかもしれない。しかし、この爽快な気持ちは何だろう。何度読んでも、それは変わらな…

建築家の果たす役割 (安藤忠雄 レンゾ・ピアノ)

日本が誇るグレートな建築家、”世界の”安藤忠雄さんの建築展が今、大阪で開催されている。ご本人による有難いお話(講演)が5月の末にあったようで、行き損ねた私はすっかり不機嫌であったが、よく調べてみると、安藤さん直々によるギャラリートークというもの…

白川静 漢字の世界観 (松岡 正剛)

平凡社の非凡な新書である。そして、驚いた。白川静さんの名前は至る所で拝見していたが、まさか男性だったとは思わなかった。届いた本の帯に掲載されている白川氏の写真は、どうみても温厚そうな”おじいさん”である。哲学者のような風貌。静、という名前か…

李香蘭 私の半生 (山口淑子、藤原作弥)

午前2時。夕方にアマゾンから届いた「李香蘭 私の半生」を読み終えたところだ。大体金曜と土曜の夜は本を読んでいるが、この静まった時間は、本の世界やその余韻に浸るのにちょうど良い。例えるなら、美術館や展覧会で作品と対峙した後にカフェでコーヒーを…

現代アート入門の入門 (山口 裕美)

現代アートといえば、何を思い浮かべるだろう。洗濯機にかけられた新聞紙や、コップに立てられた歯ブラシ、または、なんかよくわからないカラフルな抽象画、もしくはただ一色で塗りつぶされたキャンバスといったところだろうか。そういったイメージから、現…

マダム・エドワルダ (ジョルジュ・バタイユ)

創造と破壊。生と死。オリジナルとコピー。 最初にAという概念ができ、それの対としてのBという概念ができる。これらはペアになり、あたかもお互いがお互いを支えあっているようである。思想史の「近代」終焉として「脱・構築」というムーブメントが打ち出さ…

新・建築入門 (隈研吾)

それぞれの時代に、その時代を代表するアイコンのようなものが必ず存在する。絵画や、音楽、思想に文学、そして建築もまた然り。それらの背後から権力の変遷を読み取ることができる。建築ほど権力を表す装置として素直なものは無い。思想や絵画、文学はその…

ツキミモザ (ヨシエ)

ハギレを用いた大変美しい絵本である。子供向けのものであるが、とても内容が示唆に富んでいる。 あらすじ 最愛の母を亡くした主人公は、広い世界で一人ぼっちになってしまった。そんなことにはお構いなしに世界は今日もにぎやかで、一人取り残されたような…

社会学入門 (見田宋介)

私が社会学に対して興味を持ったとき、初めて読んだのが若林幹夫著の「社会学入門一歩前」だ。その次に本書をチョイスした私は、「入門前」→「入門」という初心者の王道ルートを辿ったと言える。(入門の次、つまり現在ルーマンに挑戦しているのは若気の至り…

孤独な散歩者の夢想 (ルソー)

シラフでは、絶対に読めない本がある。真夜中の静まった時間(それも、最後に誰かと会話してから数時間たった頃が望ましい)、少しアルコールを含んだ状態で、なんとなく陰鬱な気分に浸りながら、文章を頭の中に流すように、読む。BGMは、サティ。特にこだわり…

天才の心理学 (E.クレッチュマー)

天才と狂気は紙一重、とはよく言ったものだ。あの文豪ドストエフスキーも、鉄血宰相ビスマルクも、マホメットもゲーテもカントもライプニッツも皆、狂気の淵を彷徨った人である。健全な精神状態で一生を全うした天才なんて存在しないのではないか、と思わせ…

外科室 (泉鏡花)

私は、よほどの事、たとえば昨晩は徹夜でしたレベルでない限り、会社の昼休みに眠ったりはしない。というのも、一度ひどく不可解な寝言を言っていたのを指摘されて以来、人の集まる場所では怖くて眠れなくなってしまった。とはいえ、やはりどうしても睡魔に…

生物から見た世界 (ユクスキュル/クリサート)

京都旅行でやった舞妓体験の写真が先日手元に届いた。どこの美女かと思えば、私である。美術館で良い作品があると、私は何十分もそこに立ち止まるが、この素晴らしい写真達も同様に私を強く惹きつけて放さない。(すいません、これ、単なる前フリなんで、大目…

生命とは何か -物理的に見た生細胞- (シュレーディンガー)

中学生ぐらいの頃、地学の授業で「地球は自転・公転していて、その運動で実は全くの球体ではなく楕円形になっている」という事を聞いてかなり驚いたのを覚えている。当たり前だが、地球が自転・公転していることに対してではなく、楕円形である事に驚いたの…

茶の本 岡倉天心(覚三)

私は家ではあまりお茶を飲まない。コーヒー党である。 が、しかし、コーヒー飲んだからといって目が覚めるわけでもなく、眠りに入るまえのナイトキャップ的一杯となってしまう。これから勉強だ、という時も然り。結局のところ、現代においては、嗜好品はリラ…