Beauty & Chestnut

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建築めぐりを味わうために必要なもの

何となく、暇だったので適当に考えてみた。単にふざけて書いているだけなので、異議申し立てがあっても後で直接メールしてこないように。

1) フットワークの軽さ
言うまでもなく、実物を見に行かなければ建築めぐりというもの自体が成り立たない。履きなれた靴を事前に洗い、よく陰干ししておく。これでなんとなく出かけたい気分になる。ただし、紐を通さなくてはいけないデザインのスニーカーは洗うことでかえって手間になってしまうので、気をつけなければならない。
ちなみに私は一足もスニーカーを所持していないので、いつも何らかのヒール靴であるが、カツカツと音を響かせながら颯爽と歩くのも一興である。が、岩の転がる土道は靴の汚れとヒールの消耗が気になり、歩けない。

2) その土地の歴史にかんする知識
その土地にはどういう歴史があるのか。知らなくても、ここに建築があるから的ノリで観察するのも可能であるが、もう一歩踏み込むためのスパイスとして事前に調べておきたい。たとえば神社や寺院を見に行った時、何も知らなければそれはただの宗教的空間にすぎない。他の建築物、空間と比較して対象物の個性を引き出すためには、最低限対象物(建築物)に関して、誰が、いつ、何の目的で作ったのか、を知っておきたい。余力があれば、周辺の文脈を読み取るため、東京スタディーズ的なものも読んでおくと良い。だが、正直面白くないので、日本史とか地理好きの建築愛好家を一人連れて、彼または彼女に説明させればよい。

3) 構造にかんする知識
物が建っているというのは、重力に対する挑戦である。あまり構造にのめり込むと構造表現主義に傾いてしまう恐れがあるため、おおまかに柱と梁がこのへんにあるのだろうレベルで良い。・・・と言いたいところだが、最近は柱の見当たらない建物が多いので、「これは○○構造である。かも知れない」と推測が立てられるレベルであると楽しいし、より深いレベルでの観察が可能になる。構造とは、使われている素材で「S造」「RC造」といった類に分けるのと、力学的構成から「ラーメン構造」「アーチ構造」などと分けることが出来る。ここで言う構造は、後者である。

4) 観察眼
写真に収めるもの良いが、あえてここでデッサンしてみるぐらいの時間的・心理的余裕があるのが好ましい。絵心、技術があれば尚良しであるが、美大生や建築家志望でない限り、「基本的デッサンのテクニック」の類のハウツーを1冊ほど読んでおけば、それなりに書けるものである。(もちろん、本格的ではないが。)ここで大切なのは、ものをよく見る、という行為である。上手にデッサンを仕上げる必要はない。ついでに、デッサン時には座り心地のよい椅子が欲しい。座る時も、通行人の邪魔にならないよう、常識が問われる。そう、社会とは目的の違う個人の集まりがいかに最大多数の最大幸福を実現するかがキーなのである。ジャイアニズムも大いに結構だが、その際は道路を買い取るぐらいの覚悟と費用が必要となる。

5) 関わった人たちを考える感性
とりあえず、安藤忠雄さんと隈研吾さんは素晴らしい。安藤氏の独創性とチャレンジ精神、隈氏の建築哲学は絶賛するに値する。さて、目の前にある建築物は建築家と構造家がいないと成立しないものである。かつ、そこに携わった全ての人、つまり話題に上る建築家以外にも、表には出てこない職人さん達あってこそなので、彼らに敬意を払う。そして、企画、設計、施工、竣工、完成した建設物を使用している人たちまでの物語性を空想でも良いから読み取る。

以上の5点が、建築めぐり時にあれば望ましい。