Beauty & Chestnut

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古事記

是奇書也(笑)
日本最古の書物で、上、中、下の三つに分かれる。稗田阿礼という人物が編纂に深く関与している。一度目にしたものや耳にしたものは決して忘れない、という類まれな記憶力を有していた。名前以外、あまり記録が残っていない。アメノウズメの子孫である、という理由で稗田阿礼は女性だ、と唱えるひとも居れば、語り部とは社会のマイノリティが生き延びるためになった職業で、稗田阿礼は目が見えなかったのでは、と主張する人もいる。さて、古事記であるが、いくつかの小話を中学の時に習った覚えがある。部分的なものだったので、古事記が全体としてどのような書物であるか、あまり知らなかった。通読してみて、特に印象深かったものをいくつか。

■究極の誘い言葉「汝が身は如何に成れる」(上)
日本書紀でも良かったけれど、如何せん、冗長な感じがしたので古事記の方を読むことにした。さて、有名なくだりである。天と地が分かれ、天上の神々による話し合いの末に、イザナギイザナミに、まだ固まっていない国土を固定させる命令が降りる。そこで二人はオノコロ島という最初の国土を完成させる。その島にてイザナキが「あなたの体はどのような造りになっているのですか?」とイザナミに尋ね、答えて言うには「私の体は一ヶ所だけ塞がらない箇所があります」。さらにイザナギが言うには「私の体には一箇突起がある。あなたの体の塞がっていないところに、この突起を入れて国を生もうと思うが、どうだろうか?」。何言ってんだか。よくわかりません(笑)そして、「この天の御柱を一周し、出会ってから交わりいたしましょう。」と言い、お互いに反対方向へ歩き出した。出会いがしらにイザナミが「まぁ、なんていい男(あなにやし、えをとこを)!」と開口一番に発する。いまさら何を感動するのか、と思うが、こうやってシキタリ的な事を言って結婚へ結びつけるのが、日本の神話。その後にイザナギが「おぉ、なんていい女!しかし、女の方が先に言うのはどうだろうか」と言って心配するが、”然れどもくみどに興して子水蛭子をうみたまひき”(そうは言っても、神殿で交わり、水蛭子を生んだ)。そうは言っても、交わった(笑)。生まれた水蛭子は葦船に入れて流してしまった。

■小学生レベルの夫婦喧嘩「一日に千頭を絞り殺さむ」「吾は一日に千五百の産屋を立てむ」(上)
火の神を出産した時の火傷で亡くなったイザナミは、イザナギを置いて黄泉の国へ行ってしまう。イザナミを恋しく思い、後から追いかけるが、時既に遅し。黄泉の国の食べ物を口にしてしまったイザナミは、生前とはまったく違った形相になっていたので、イザナギに会うことを拒んだ。しかし、熱心に説得したイザナギは、ついにイザナミに戻る決意をさせる。「黄泉の神に相談してみるので、その間は決して覗いてはいけない」と言われたが、案の定、お約束の展開。見られたくない姿を見られてしまったイザナミは、逃げるイザナギを追って殺そうとした。寸前のところで地上に逃げ帰ったイザナギ。黄泉の国への道を閉ざし、向こう側のイザナミが言った。「とんだ恥をかかせてくれたわね。愛しいあなた。私はあなたの国の人間を、一日に千人殺してやるわ。」イザナギが答える。「ならば私は、一日に千五百の人間を産みましょう。」(※ちなみに、日本神話では男性の神様が出産することもあるので、人間を産むのは容易い御用。ツクヨミ、アマテラス、スサノオはこの男神によって誕生している。)古事記を書いたのは平民、庶民の階層ではない。このイザナミイザナギのやりとりから、作者(貴族階級)が下々の民を軽んじているように感じるのは私だけではないはず。ともあれ、「千人殺してやる」というイザナミに対して「じゃあ千五百人生む」と言ったイザナギのやり取りは、どう見ても小学生の「お前、あほちゃうかー」「あほって言うほうがあほなんですー!」のレベルである。割れ鍋に綴じ蓋(笑)

■余計な一言が命取り「汝は我に欺かえつ」(上)
百人乗っても大丈夫!のイナバのウサギである。隠岐の島にすんでいた白兎は、本土へ行きたいと思っていたが、海を渡る方法が無かった。そこで、このウサギはワニザメに「あなたたちワニザメの一族と、私の一族のどちらの数が多いか勝負しませんか?」と誘いかける。「私が数を数えますので、本土に向かって一列に並んでください。」と言い、ワニザメを並ばせる。なかなかの策士であるが、ツメが甘かった。並ばせたワニザメを踏み台にして本土に渡りきったウサギは、ついうっかり「あなたたちは私に騙されたのですよm9(^Д^)」と口を滑らせ、ワニザメの怒りを買い、毛皮を剥ぎ取られてしまう。さらに、泣きっ面に蜂とはこのことで、偶然通りかかった神様ご一行の「海水に浸かって日光浴したら治るよ。」という嘘の助言に従い、傷が悪化する。人(ワニザメ)を騙したウサギであるが、素直でもある。いわゆるお調子者の類。策を弄するのなら、最後まで気を抜いてはいけない。余計な一言が命取りになる。

■駄目男にご注意「一宿にや妊める。是は我が子にあらじ」(上)
ホノニニギというアマテラスの孫にあたる男神が地上の国を治めるために、天降りをした。笠沙の岬で美しい娘(サクヤビメ)に出会い、父親の許しを得る。父親はこの美しい娘と、その姉を一緒にして差し出したが、ホノニニギは姉の容姿が気に入らず、親元へ送り返してしまう。ひどい屈辱を感じた父親は、「二人一組で差し上げたのは天神の子孫(天皇。ここではホノニニギを含むそれ以降の天皇)が永遠不滅(姉)で子孫繁栄(妹)を願い、神意を授かるように、という意図があった。今、一人を送り返してきたが、そのせいで天神の子孫の寿命は永遠不滅ではなくなった」と言った。これが、現人神である天皇の寿命が永遠のものでない理由である。そして、ある日サクヤビメが「私のおなかにはあなたの子供がいます。」と告げる。その返答が、興味深い。答えて言うには「たった一晩の情事で子供が出来たというのか。きっとそれは、私の子供ではない」。駄目男すぎてワロタwwwwwその後、サクヤビメは無事に出産したが、このような男には気をつけたいものである。

いくつかピックアップしてみたが、何故かすべて上巻からになってしまった。古事記は先に述べた通り三部作になっていて、上巻は神話、中・下巻は神話のエッセンスを残した歴史・伝説の類である。古事記編纂の目的は皇室の正当性を主張するためだったり、大人の事情だったり、政治的な要因がかなり強いものであるが、単純に物語として読んでみても面白い。そのうち日本書紀の方も読んでみたい。