Beauty & Chestnut

栗野美智子オフィシャルウェブサイト(笑)へようこそ。ツイッターもやってます。@Michiko_Kurino

葡萄の収穫体験

先日コンビニに行ったついでに、たまたま東京ウォーカーを立ち読みしたら、収穫体験の特集の記事があった。家庭菜園を始めてから農業や農園に関心があったので、いつか行こうと思っていて、それを話したら、母が行きたいと言い出したので、同行することにした。東武動物園駅からバスで15分、さらに徒歩10分のところに立地する「アグリパーク ゆめすぎと」は、夏休みシーズンだからなのか、平日なのになかなか繁盛している。35度以上はあるであろう猛暑の中、ひたすら歩き続けて来場した私たちは、「徒歩10分」の壁がかくも大きな物なのか、ただ歩くだけなのに、なぜこうも怒りがこみ上げてくるのか、そもそも徒歩10分というのは詐欺である、などと併設の食堂で熱く語り合った。着いたときには、どうしようもないほど不機嫌だったが、取れたて野菜てんぷらを食してご機嫌になった私たちは食堂を後にして収穫体験の出来る農園へ向かった。しばらく歩いていると大きな瓢箪が目印の受付所が目に入った。

「あれ、本物かな?」という私の疑問に対し、
「さぁ?多分、本物やろ。」と和歌山の田舎で15年育った母が言った。
「田舎で瓢箪とか栽培してなかったん?」
「うちは農家じゃないで。いやぁ、それにしても、ここまで来る途中に稲の匂いがしとったんやけど、和歌山を思い出して、懐かしかったわぁ。田舎ってどこも同じやな。」
「そういえば、道中、田んぼばっかりやったなぁ。あれが稲の匂いなんや。」
「育児するんやったら田舎がいいで。」
「せぇへんけど、都心へ30分ぐらいの郊外には住みたいなぁ。今みたいな新築マンションばっかりのところじゃなくて、生活感溢れる郊外が理想やな。」
「うちの近所かって、ちょっと歩けば下町やんか。」
「そういえば、そうやったな。」

灯台下暗しである。
受付には誰もいなかったので、少し離れた所にある小さな建物に入ってみた。丁度そこで、係りの人が休憩していたので、収穫体験が出来ないかどうか聞いてみた。

「今年の夏は暑かったでしょ?だからあまり作物が実らなかったのよ。サヤエンドウは実があまりないし、葡萄は大きさがバラバラ。朝と夜の寒暖の差がもっとあれば、順調に成長したのだけどね。でも、甘いわよ。食べてみて。」

そう言って、葡萄畑へ案内してくれた彼女は私にハサミを渡し、房から一つか二つほど実をとって、口に入れてみた。太陽の光をたくさん浴びていた葡萄の実は温かく、いつも冷やされたものしか食べたことのない私にとって、とても新鮮な体験だった。そして、甘い。

「あぁ、本当。甘いですね。これは美味しい。」
「でしょう?形が良くないからお店には並ばないものばかりだけど、好きに収穫していってね。」
「確かに実の大きさはバラバラですけど、それを逆に表情として、売りに出せないものなのでしょうかね?」
「まぁ、個性的だとは私も思うんだけどね。規格外だからね。」

葡萄の栽培はやった事がないから詳しいことはわからないが、それでも趣味程度に野菜の栽培を経験してみて、植物を相手にすることの大変さを少しは分かっていたつもりだった。しかし、別に売るために栽培しているわけではないし、食べたい時に実っていなければ、スーパーに行けば簡単に手に入る。趣味の菜園と生活の菜園の隔たりを大きく感じた。2,3房収穫しようと思っていたが、なかなか粒ぞろいの房が見つからず、彼女の言うとおり実の大きさがバラバラなので、最終的に収穫した量が予定よりも大きく上回ってしまった。それもまた、良い経験なのかもしれない。普通の葡萄をただ収穫するだけという機械的作業は面白くないし、規格外の葡萄は都会ではなかなかお目にかかれないのだから。「予定外」との出会い。収穫なのに、採取の楽しさ。

「よかったら、今度は10月ぐらいに来てね。野菜の収穫が出来ると思うから。」
「そうですね。葡萄も美味しかったし、次は野菜を採りに来ます。」

スーパーの袋1つ分の葡萄を片手に、私と母は帰路に就いた。

・受付の瓢箪と私。

・葡萄畑。不揃いな、だけども愛嬌のある葡萄が実っている。