Beauty & Chestnut

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これぞ、ザ・ホスピタリティ。トゥール・ダルジャンで昼食を。

ミシュラン ランチ巡りの第二回目はトップオブザフレンチ(と私が勝手に認定している) トゥール・ダルジャン。フランスの本店は1582年に誕生し、初の支店となる東京店は1984年にオープン。16世紀といえば、日本では信長や家康が活躍していた頃である。歴史の重みを感じる。以前、魯山人の何かの本で鴨料理に関する記述(あの有名なわさび醤油のエピソード)を読んだ記憶があるが、その鴨料理を提供したのがトゥール・ダルジャンなのである。また、昭和天皇も召し上がられたことで有名だ。いつか行きたいな、と思いながら東京店のあるニューオータニのサイトを見ていたら、期間限定でランチを始めることを知った。コートダジュールで過ごす休日、をコンセプトに南仏をイメージした空間と料理を提供するのである。トゥール・ダルジャンにとっては初の試み。そして、私にとってはグランメゾンの場数を踏む良い機会なので、早速予約して行ってきた。そして本稿はその記録である。

★の数と意味
※あくまでグルメ初心者である私の基準です。何でも美味しく頂ける、ある意味幸せな庶民の舌の持ち主です。

★:不快に感じることが2個以上、または全く値段相応ではないレベル。再び来店することは無い。
★★:「これはどうかな」と少し不快に感じることが1個あるレベル。
★★★:最低基準をクリアし、特に不快な思いをすることが無かったレベル
★★★★:三ツ星の基準プラス特に印象に残った事が1個あるレベル。機会があれば、また来店したいな、と思う。
★★★★★:特に印象に残った事が2個以上、または全く文句の付け所が無いレベル。必ず来店したいと思う。

料理:★★★★
ランチは6000円のNice(ニース)、10000円のCote d’Azur(コートダジュール)、その日の食材で作る13000円のコースの三種類が用意されている。Niceを注文するつもりで行ったが、「どうせマルコポーロで追加料金になるのなら、ネットで見た芸術級のデザート、サヴァランも食べられるCote d’Azurにしよう」とミーハー精神全開で予定変更。一皿目の「海岸通りの花のマルシェ」はプリップリの海老を小さく刻み、タルタルソースで和え、その上に半月切りにしたキュウリを花のように並べたお料理。小さいながらも上品な味。食前酒として注文したオリジナルカクテルと共に、チマチマと頂く。

二皿目は「地中海の贈り物 涼しげなブイヤベースのジュレ仕立て」。ブイヤベースのスープをジュレ仕立てにし、その上に魚介類を乗せている一皿。スープはスープでしか頂いたことが無かったので、この調理法がとても斬新に思えた。このジュレが想像以上に濃厚で、口の中にブイヤベースが広がる瞬間が何とも言えない程、幸せ。ありがとう、地中海!

三皿目は「ブルターニュ産 オマール海老のマカロンラヴィオリ」。マカロンといえばスイーツのマカロンしか知らなかったので、メニューを見てどういう物が出されるのかは全く想像がつかなかった。好き嫌いが全く無いので特に心配せずに頼んだものの、気になっていたお料理。少し記憶が曖昧になってしまうが、確かオマール海老などを小さく刻んで2個のラヴィオリに包み、それをマカロンのように重ね合わせた一皿。その下に、これも曖昧だが、海老のペーストをやわらかい蒲鉾(あぁ、語彙が貧困だわ・・・)にしたようなものが敷かれていた。前の二皿がライトな感じだったのに対し、メインの前に相応しい、少し食べ応えがあるものだった。

そして、いよいよ真打登場。トゥール・ダルジャンといえばこれ!マルコポーロ!長らく三ツ星を保っていた本店が、その星の数を減らすという料理界一大事件が起こる。何とか失われた星を再度獲得しようとし、あたかもマルコポーロのように新しい一皿を捜し求めて作られたのがこの一品。ローストされた柔らかい鴨肉に胡椒の実をまぶし、濃厚なソースをかけて頂く。胡椒がとても良い仕事をしている。ランチコースなので量は少なめ。美味しいことは美味しいのだが、アラカルトとして定価で注文したいとまでは思えなかった。

そして最後のデザート「サヴァラン 4 2 1 エキゾチックフルーツのゼリーと共に」。サヴァラン、アイスクリーム、ゼリーをそれぞれ正方形にし、その上に4と2と1の目が書かれたホワイトチョコを載せ、サイコロに見立てているデザート。3つのサイコロを振って4と2と1が出たら、とても縁起がいいのだとか。アイスとホワイトチョコの間にはパチパチとはじけるキャンディが挟まれており、口を退屈させない仕掛けが何とも心憎い。皿一面に添えられているピスタチオの濃厚なソース(クリーム?)もまた、非常に美味。このデザートを食べるためだけに来店するのも悪くないと思う。そして、食後のコーヒーと小菓子。小さなマドレーヌとマカロンサフラン味のゼリーなどが銀色のお皿に乗せられてサーブされる。

後、メインの時に赤ワインを頼んだが、こちらもとても飲みやすくて感動。ワインを無性に飲みたくなる事がたまにあるものの、二口ぐらい飲めば胃がムッとするので敬遠していたが、ここで出されたワインは最後まで美味しく頂けた。グラス600〜700円のワインとは一味違うな、と思った。とはいえ、ワインについては殆ど何も知らないので、飲んだ時の感覚が全てになってしまうが・・・。トータルでみて、とても満足なコース。

食器:★★★
トゥール・ダルジャンのイメージカラー、濃紺がお皿の淵を彩っている。南仏をイメージ、とのことなので、色とりどりのガラスの食器が出てくるのかな、と思っていた。シンプルで無駄が無く、上品で、あくまで料理が主役であることを思い出させる食器。ナイフ、フォークなどは日本人女性にとっては少し大きめ。これがスタンダードなのかしら。

空間:★★★★★
ミシュランガイドでも高く評価されているだけあり、初回来店時には感動よりも先に緊張してしまう程の格式の高さを発揮している空間。エントランスから受付まで暗い一本道になっており、外の世界とは完全に切り離される。非日常への入り口として十二分に機能している。ふかふかの絨毯を歩いていると、あたかも貴人にでもなった気分に。今回は南仏での休日をイメージした、とのことで、ダイニングはビーチパラソルを立て、テーブルには木の椅子が置かれている。この木の椅子はやや古さを感じさせるが、逆にそこがこなれた印象を与える。中央には(確か)花かフルーツが飾られた横長のテーブルがあり、空間のアクセントとして、または食事をしているお客さんのプライバシーをある程度守っている。そして頭上には豪華なシャンデリア。一見の価値あり。また、受付からダイニングへの通路には、おそらく何か歴史のあるであろう銀の食器が並べられていた。

接客:★★★★★
お料理よりも、内装よりも、高評価したいのがトゥール・ダルジャンの接客態度!まだまだ訪れたフレンチレストランの数は少ないものの、ここを超える接客を受けられるレストランは殆どないのではないか、と勝手に確信している。ナプキンを膝の上にかけるタイミングで悩んでいたら、ごく当たり前のように、そして嫌味のないように店員さんがサラっと掛けてくれたのが好印象。また、フォークとナイフを(フランス料理を食べる目的では)使い慣れていないため、モサモサとしていたらスプーンを出してくれたのも印象深い。お客さんに丁寧に接するだけではなく、お客さんを育てる意志も感じられる。これがグランメゾンの余裕なのだろうか。こちらを見られている感じは殆どなかったが、この気配りが出来るということは、私が気付かないように見ているのだろう。店員さんを呼びたいな、と思って顔を上げたらすぐに目が合って、テーブルまで来てくれる。ただ内装や周りの様子を見ようと思って顔を上げても店員さんはこちらを見ない。読心術でも身に付けているのかしら、と思わせるほどの、全く非の打ち所の無い接客。エビアンの値段が1500円なのも安く感じてしまう。

総合評価:★★★★
通常のランチに比べて値段が安く設定されているものの、ちょっとランチでもしようか、と気軽に訪問できるお店ではない。しかし、このレストランに通えるぐらいの人物になろう、と仕事や勉強への意欲を高めてくれるという意味で非常に価値がある。今回のように期間限定のイベント時や、ランチなどで賢く利用したい。