Beauty & Chestnut

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コース料理の価格革命 ブラッスリー ポール・ボキューズ/ミュゼ

六本木店(国立美術館)と大丸東京店をそれぞれランチとディナーで訪問。ミシュランで星を獲得したメゾン ポール・ボキューズブラッスリー版である。ブラッスリーだが、たまにメゾンのアラカルトがコースに取り入れられていたりするなど、あなどれない。とにかく安い。ランチコースが2000円である。しかも、ソムリエがいる。私は滅多にワインを飲まないのでソムリエの実力は測りかねないが、ブラッスリーの概念が変わりそうなほどの本格的なコース料理をこの値段で提供しているのは革命としか言いようが無い。ちょっと気軽に、だけど本格的なフレンチを食べたい、というワガママを叶えてくれるお店である。

料理:★★★
ランチコースは2000円、3200円の2種類が用意されている。パンとリエット、メインディッシュ、デザート、コーヒーに、3200円のコースには前菜が加わる。極限まで無駄を省いてこの値段で提供していることが伺える。経営努力には脱帽。コースの内容はほぼ1ヶ月半に1回ぐらいのペースで更新され、有名店では異例の早さである。しかも六本木店の方は展覧会とのコラボメニューが登場することもある。気軽に行ける値段の分、頻繁に訪れるお客さんを飽きさせない工夫をしていることが分かる。その代わり、料理は丁寧に作られているのがわかるのだが、味が「普通〜中の上」の域を出ない。見た目は美しい。もう1000円高くても誰も文句を言わないに違いない。やはりボキューズの名を冠しているだけあり、同価格帯のブラッスリーと比べて突出しているのも確かである。さらに、ソースもしっかりしている。だけど、何か足りないのだ。鶏肉一つにしても、ローストにしたものと胸肉にフォアグラを入れてキャベツを巻いたものを食べたのだが、特に記憶に残っていないのである。フリカッセを詰めた真鯛のスフレ仕立ても、やや平坦な味だった。「洗練」と「良くも悪くもクセがない」の丁度中間地点である。値段設定が仇になっているのだろうか。とにかくそう思わずにはいられない。しかし、高いというイメージが付きまとうフレンチのコースをここまで安く提供しているのは革命的である。次のコースメニューは何だろうか、と気になってしまうのは私だけでは無いはずだ。

食器:★★★
オリジナルの食器を使用している。白を基調とし、ボキューズのロゴがプリントされている。皿としての作品的主張はないが、その分料理の装飾に工夫が凝らされている。

空間:★★★(大丸店)/★★★★(六本木店)
大丸店はキッチンの中が見え、非常にオープンな印象を与える。メインカラーは白で清潔感があるが、景観が悪いのが残念。一方、六本木店は美術館内という立地条件で、かつ天上は高く、さえぎる壁もないので広々とした雰囲気。テーブルとテーブルの間隔が狭いのが難点。両店舗とも、アクセスは抜群。

接客:★★(★)
特に問題点は無いが、かといって感動するほどでもない。六本木店に関しては店内が広い分、店員さんを呼ぶのに少々手間がかかってしまうこともあるが、欠点というほどの欠点ではない。ただし、店員によってはホスピタリティの基礎のキから復習して頂きたいと思うこともある。料理の説明はなし、お客さんに気配りが出来ていない、機械的な接客態度、など。料理を作ることだけがボキューズの精神を踏襲する事ではない。

総合評価:★★★★
平均して四捨五入すると★3つであるが、フレンチを普及させようという経営努力、またシェフの丁寧な仕事を評価し、星を1つ多めに付けた。そう、ここはブラッスリーなのである。出される料理の見目麗しさに、そのことをつい忘れてしまう。上質なランチタイムを過ごせることは間違いなく、訪れるたびに楽しみがあるのも事実。フレンチ愛好家のみならず、飲食店経営者(1つの成功例として学ぶ点は多いと思う。)、料理愛好家などから重宝されるお店だろう。友人とのランチ、美術館の余韻に浸りたい、ちょっとフレンチを食べたい、という時に利用するのが良い。