Beauty & Chestnut

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新居にて

とある郊外で閑居し始めてから2週間が過ぎた。我が新居は、西の繁華街といわれる某駅から自転車で30分ほどの距離にある、本当に文字通りの「市中の山居」である。家の近所は野焼きの渋い香りや、湿った土の香りが満ちており、日中はのどかな雰囲気に包まれていて、夜になると物音一つしないほどの静寂が聞こえる。それほどの田舎なので、町内の人口よりもリスなどの野生生物の方が、数が多いのではないかと勝手に推測している。「これは少し、時間を持て余しそうだ。」と、転居してきて最初の夜に悟った。

ちょっと時間をつぶしに駅前へ行くにしても、往復で、しかも自転車で1時間だと考えると、出かけるのが億劫になってしまう。しかも道は部分的に険しい。自宅で読みかけていた本を読もうか、それとも音楽を聴きながらワインでも飲もうか、あれこれ考えて実行してみるが、あまり長続きしない。再提出のレポートを書き直す気にはならないし、かといって新規のレポートを書くためにテキストを読み込む気にもならない。ふと、今まで私は自宅に居た時は何をしていたのだろうか、と思った。

古い日記帳やカレンダーを引っ張り出し、週末の予定を振り返ってみたが、これと言って画期的な過ごし方はしていなかったようである。やはり夜は自宅にいて、本を読むなり、レポートを書くなり、または資格の勉強をして過ごしていた。では、何が今と違うのかといえば、思いついたのが「どこかに行こうと思えば気軽に行ける程のアクセスの良さがあった事」である。区内在住という地の利が幅を利かせていたみたいだ。お一人様のプロフェッショナルといえども、「ちょっと気軽に遊びに行く場所」という保険を失ってしまえば、こうも弱くなってしまうものなのだろうか。引っ越す前に、気になっていた赤坂のバーを後2、3件行っておけばよかった、と悔やまれる。これでは毎日が夏の風物詩「勉強合宿」状態ではないか。いっそ仏門に入る(在家)か茶道を始めるかをして、市中の山居ライフを極めてみるのはどうだろうか。最初の一週間はそう思っていた。

暇なものは暇なので、自宅もしくは自転車で10分圏内の距離で出来る新しいライフスタイルを構築することにした。レポート作成は避けて通れないので、近所の唯一の喫茶店(自転車で10分ぐらい)でテキストの読み込みやレポートの構成を練ったり、長らく放置していたこぎん刺しを再開したり、アロマや茶香炉を焚いてヨガをしたり、ネットが開通したのでオンライン英会話を始めてみたり、今まで飲んだワインのテイスティングノートを整理して定期的にブログで公開したり、最近増えてきたオンライン上のプログラミング入門ツールで何か作ってみたり等、アイデアはそれなりに沸いてくる。もう少し暖かくなったら、僻地住まいを逆手にとってサイクリングを趣味にするのも楽しいかもしれない。まずは2、3個取り入れてみて、新鮮さを感じたら継続してみよう。