Beauty & Chestnut

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語学と教養、あるいは英語講座の話

青年技術士交流実行委員会主催の英語研修に参加してきた。Steven Ashton氏を講師として招き、4つある英語のスキル(Reading、Writing、Listening、Speaking)の中で日本人が最も苦手とするSpeakingを練習し、英語力向上のキッカケにしよう、という趣旨の講座である。TOEICのスコアを目安に初級、中級、上級の3つのグループに分け、まずは参加者同士が英語で自己紹介を行い、次に他己紹介、グループセッション、そして有志による英語のプレゼンテーションが行われた。英語には長い間触れていなかったので、何か準備をしておこうと思いCNN English Expressというニュース記事を題材とした英語の雑誌を購入して1週間ほど奮闘していたが、ネイティブの喋るスピードについていけない事とニュース英語特有の単語を前に辟易していた。すっかり自信を無くして講座へ出席したが、思いのほか善戦することが出来た。もちろん、扱ったテーマが簡単なものだった事や講師の説明が丁寧であった事が勝因である。しかしそれ以上に、「今は何を話すべきか」を全員が共有していた事が大きい。

たとえば自分は今、自己紹介をしているとする。自己紹介といえば名前、年齢、職業、所属部門、趣味、など一定のテンプレートがあり、よほどマイナーな趣味を嗜んでいたり、個性的な思考回路を持ってでもいない限り、たとえ文法を間違えていても相手はうまく解釈してくれるものである。自分が聞き手になった時も同様である。経験による推論も補助的要素となり、相手の言いたい事や言っている事をかなり正確に理解する。こういった場には「何を話しているか」という前提条件の共有と、「相手の話をしっかり聞く」というルールが存在している。

私たちは普段、「今から〜〜について話をしましょう」といって話をすることは少ない。突然何かの話題をふったりふられたりして会話が開始する。どういった話題が出てくるのかはその場の状況や話し手の個性、教養によって変わってくる。一見会話が成立しているように見えても、相手の話を聞かずに自分が話すことだけを考えているな、と思わせるケースも多い。コミュニケーション能力とは雑談力である、という世間の風潮もあるが、私は「相手の話をよく聞くこと」と「適切なレスポンスをすること」が真髄ではないだろうかと思う。

相手が機械工学のエンジニアであれば、高校レベルの理科の知識があれば、分からない話題になってもうまい具合に質問することが出来る。(質問すると喜ばれることが多い。) 良い意味でも悪い意味でも、自分の事や自分の好きな事を話したいという人が多いものである。相手の話をよく聞く姿勢は話し相手が日本人であれ、外国人であれ、心がけひとつで実行することが出来るが、適切なレスポンスを行うためには語学力と教養が必要になる。改めてコミュニケーションとは何かを考えさせられる講座だった。