Beauty & Chestnut

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山形旅行記(かみのやま温泉 花明かりの宿 月の池) 1日目

先日母が誕生日を迎え、本人が折角なのでどこかに旅行したいと言ってパンフレットを沢山貰ってきた。どうやら温泉に入りたいらしく、私が両親宅へ訪問した時にはすでに何か所か候補が決まっていたようで、どこがいいかと聞かれて山梨か山形の二択まで絞り込んだ。最終的に決め手になったのはパンフレットの1枚の写真だった。山形県上山市にある「花明かりの宿 月の池」の薔薇が浮かんだ部屋風呂で、「これはロマンチックねぇ」と見解が一致した。その宿は母娘旅のプランがあり、食事の時にカクテルが付くサービスや館内で使える1000円クーポンなどが特典だった。私は東北が好きなので、出発の1週間ぐらい前から妙にソワソワした気分だった。


東北のどこが魅力かと聞かれたら、埼玉からアクセスが良いのと人が少ないのと、程よく非日常が味わえるのと、後は意外と美味しいものが多い所、適度にゆるい時間が流れているところ等、考えればいくらでも理由は浮かんでくるが、もっと根源的なところまで突き詰めると「何となく好きだから」である。東北と言っても青森と山形と宮城の一部ぐらいしか土地勘がないので東北が好きと言い切ってしまうのはちょっとばかし不安ではあるが、好きなものは好きなのである。山形の蕎麦とワインは美味しいし、青森の夏祭りと雪見風呂は旅情を掻き立てる。


日曜の正午に大宮駅を発った。駅弁売り場で「こだま」を模した弁当箱に入ったお弁当を購入し、車窓を眺めながら食す。中身はエビフライやオムライス、ゼリー等が入っており、明らかに子供向けのものであったが、それなりにお腹は膨れた。あれよあれよと宇都宮、郡山を過ぎ、新幹線旅の快適さを実感した。福島を越えた辺りから残雪が現れはじめ、米沢あたりまでは冬景色が続いた。電車の速度が落ちたので、じっくり辺りを観察し始める。白い雪と黒い幹がコントラストを成し、人も動物も居ない景色は時間が止まっているかのようだった。車窓から見える斜面がなだらかになりはじめ、しばらくして米沢駅に着いた。約1年ぶりに見る駅前の様子は以前と変わらずなんでも受け入れるような、あるいは単に何にもないだけのような、開放的なのか閉鎖的なのか分からない空間的な広がりがあった。そして赤湯、かみのやま温泉へと続く。


駅に着いたとき、宿の迎えの人がすでに待機していた。もう1組来るらしく、合流してから宿へ向かうとの事。少し時間がありそうだったので、駅前にある和菓子店「だんご本舗たかはし」へ向かった。お団子2本とかりんとう饅頭を購入。すぐに迎えの人と合流して宿へ向かった。もう少し時間があれば山形市まで出て、美術館やら市内散策をしたかったが、山形からかみのやま温泉駅のアクセスを考えると少し憚られた。利用しようと思っていたレンタサイクル店はあいにく休店日だったので移動手段が無いのである。外出する必要が無いほど宿が素晴らしかったので結果的に良かったが、やはり東北では移動手段は持っておきたいものである。


駅から車で10分も経たないうちに宿に到着した。道中、武家屋敷や上山城の案内を聞き、明日にでも行こうと思った。車から降りると女将さんたちが出迎えてくれた。花明かりの宿という名に違わず、アンティークでどこか大正ロマンを連想させるフロントで受付を済ませ、部屋へ案内された。宿自体は大きな物ではなかったが、どこも良い具合に空調が効いており、掃除も行き届いていて快適に過ごすことが出来た。楽しみにしていた部屋風呂も、薔薇の花がトレイに乗せられて待機していた。

部屋風呂は夕飯の後に入ることにして、もう一つの楽しみである大浴場へ向かった。ここは何と、温泉につかりながら日本酒が飲めるのである。


浴場以外でも夕方からワインやコーヒーがフロントで提供されるのだが、そこまで蟒蛇ではないので温泉につかりながら飲む日本酒だけは絶対に堪能しようと決めていた。露天風呂には樽と升がセットされており、飲み手を待っているかのように鎮座していた。肩までつかり、体温を少し上げてから升を1個手に取る。ゆっくりと樽から注ぎ、まずは香りを堪能。そして、一口。銘柄は分からないが、1瓶1000円台半ば~2000円前後の吟醸系日本酒だ。旨い。温泉につかりながら飲むという、高揚するシチュエーション効果を除いても旨い。これは真冬に来ると延々と飲み続けるパターンである。後で夕飯と部屋風呂を堪能するという一大行事が控えていたので程々に嗜み、後ろ髪をひかれる思いで浴場を後にした。


身体の芯から温まり、部屋で少し寛いで夕飯会場へ向かった。この日提供されたのは花懐石というコース料理で、メインは山形牛である。食前酒の「月の魔法」はどこか東光の梅酒を彷彿させる、女性受けするフルーティーな味わいであった。上山ワインをオーダーし、共に見目麗しい前菜を楽しみ、お刺身、山菜のスープ、てんぷら、グラタンと続く。




これは・・・中々の悦楽である。そして真打、山形牛のステーキと赤ワイン煮込み。


母は肉類が食べられないので、ステーキと赤ワイン煮込みの両方を頂くことに。ステーキの火入れが素晴らしく、咀嚼するたびにジューシーさと柔らかさのハーモニーを奏で、赤ワイン煮込みはホロホロと口の中で溶け行くようであった。


もうこれ以上食べられない程満腹になり、部屋へ。少し休憩し、部屋風呂に。

1時間ほど読書しながら湯浴みをして、ベッドへ。何もかもが最高の一日であった。