Beauty & Chestnut

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山形市街地にて

南東北旅行の2日目は朝から雨だった。午後からは曇りの予報だったので、午前中は以前から行きたいと思っていた山形美術館と山形城跡地を見に行くことにした。七日町のホテルを出て、まずは朝食を頂けそうな喫茶店を探す。朝7時半から開店している「ひまわり」という店に入った。落ち着いた純喫茶風の内装が、どこか懐かしい。壁には有名人のサイン色紙が沢山飾られていて、このお店の歴史を感じる。お客さんは私の他に数組。地元の人と、観光客のような一家が居た。窓際の席に座り、トーストとブレンドコーヒーを注文。しばらくして提供された。半分に切られた薄切りのトースト2枚にはバターがよく染み込んでおり、口に入れると芳醇な香りが広がる。アメリカン風のさっぱりとしたコーヒーで流し込んでいく。食パンとコーヒーで始まる朝も悪くない。欲を言えばゆで卵とミニサラダも欲しかったが、お手頃な価格で美味しくお腹を満たすことが出来た。


一旦宿へ戻り、テレビを付ける。昨晩から延々と平成の振り返り特集が続いており、少々食傷気味だ。メールをチェックしながら1時間ほどゴロゴロ。9時前に再びホテルを出た。徒歩で10分も経たないうちに美術館へ到着。山形美術館には吉野石膏コレクションと呼ばれるフランス名画達が収蔵されており、シャガールルノワールドガ、モネを始めとした巨匠の作品を見ることができるらしい。地方の美術館はとにかく空いているのが良くて、展示数が少なくても好きな作品を好きなだけ気兼ねなく鑑賞できるので有り難い。都心の美術館なら入るまでに行列、入ってからも人混みがひどく、とてもまともに鑑賞できたものではない。もちろん全てがそのようではないのだが、気の向くままに鑑賞したり、長居しづらい雰囲気である。


建物に入ってすぐにロダンの彫刻が出迎えてくれる。永遠なる休息の精と呼ばれる、男性が何かにもたれかかっている様な像である。「何かに」と表現したのは、本来はこの男性がテーブルに寄りかかっている作品になる予定だったが、そのテーブルが未完成のまま終わってしまったため、傾いた男性像となっているからである。傾いているものの、ジャコメッティ作品のような、風が吹いたら倒れてしまうのでは、という不安感はない。ただ、自分がこの銅像ならこの体勢は「永遠なる休息」からは程遠いので、せめて「永遠なる不均衡の中の静謐」とかそんなタイトルにしてほしい。


ロダンを後にして、西洋画コーナーへ向かう。ピカソシャガール達の作品が並ぶ。思っていたより展示数が少ない気がしたが、シャガールを見ることが出来たので満足。反対側の日本画・郷土作家達のコーナーへ向かう。こちらは長谷川コレクションというらしい。墨絵や像などが飾られていた。どれも細部まで作りこまれた名品である。西洋画とは違った魅力があり、日本画の奥深さが伺えた。そして企画展の野口久光展へ。2階のフロアはすべて野口氏の作品が飾られていた。主に映画やレコードのポスターを手掛けたマルチな才能を持つ人で、作品はもとより映画のあらすじも紹介されており、非常に楽しめた。数え切れないほどの作品があり、「禁じられた遊び「大人は判ってくれない」など知っている作品も見つかった。これは大変手の込んだ企画展だ。2時間ほど滞在し、すぐ傍の山形城跡(霞城公園)をぐるっと回り、再び七日町へ。なんだかんだで1万歩近く歩いており、良い具合にお腹が空いてきた。


何を食べようか悩んでいると、十一屋という老舗洋食屋のディスプレイが目に留まった。パスタやチキングリル、オムライス等のサンプルが展示されており、オムライスがとても美味しそうだったのでここに入ることにした。1階は和菓子店になっており、入ってすぐ左側の階段を登る。お昼時だったがそれほど混んでおらず、窓際の席へ案内された。老舗の余裕を感じるような、落ち着いた雰囲気のレストランだ。注文したオムライスはとても美味しく、そういえば平成最後のランチだな、と思った。良いお店に入れて幸運である。


再び天気予報を見ると、午後からもまだ雨が降るようで、この日の遠出は諦めることにした。近くの書店によって山形の歴史関連の本を数冊と、プリンとブッセのお店「あうる」でおやつを数点購入してホテルへ戻った。

何となく、地元の人のような1日の過ごし方をして満足した。