Beauty & Chestnut

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ベターホーム シェフに習う② ピエモンテ州

リグーリア州に続く2回目はトリノのあるピエモンテ州の料理である。ピエモンテといえばバローロバルバレスコ、アスティが真っ先に思い浮かぶが、白トリュフやポルチーニゴルゴンゾーラやバーニャカウダも有名である。この日習ったのはバーニャカウダ、ポルチーニ茸のリゾット、ココアプリンのブネの3品。特に西洋の松茸と言われるポルチーニを贅沢に使ったリゾットの香りは何とも言えない豊かな気持ちにさせてくれた。

さて、ソムリエ教本を片手にピエモンテ州について学びたい。「山の麓」を意味するピエモンテシチリアに次ぐ面積を持ち、三方を山に囲まれている。アルプスの豊かな雪解け水や河川を利用した農業も活発で、穀物や野菜、葡萄をはじめとする果実などが栽培されている。以外にもチョコレートの生産も多い。また、古い歴史があり、第二次世界大戦後の「奇跡の経済成長」を象徴する工業都市を抱える。派手な事を嫌い、親切でまじめな人が多く、ジャーナリズムや政治運動をリードしてきたという。スローフード運動発祥の地として有名であるが、そもそも何故スローフード運動が誕生したのかを調べていたらローマの広場にマクドナルドの店舗が出来た事がキッカケだったというのが興味深い。ファストフードの台頭によってイタリアの豊かな食文化が無くなってしまうという危機感がスローフード運動を生み出した。ファストフードなんて毎日は絶対に食べたくない味なのだけれども、安さと早さに関しては徹底的に合理性を追求してこそ実現できているものなので、適度な範囲でこれからも我が道を行ってほしいと思っている。こういう選択肢は人生を豊かにはしないものの、便利であるのは間違いない。スローフードのように生産から消費までこだわって作られたものも好きだし、無駄とコストを極限まで省いて食べる人の時間を節約するファストフードも有り難いので、うまい具合に共存してほしい。


料理の話に戻すと、この日の実習もかなり忙しかった。まずはブネを作り、冷やしている間にバーニャカウダとリゾットの準備を進める。ただ、切り物が多いけど複雑な作業は無いし、リゾットは応用が効くのでとても役立つ内容である。


まずはこれがブネ。

生地を何度も漉すのが滑らかな味わいにする秘訣である。アマレッティというイタリアのビスケットも生地の中に入れるのだが、このビスケットが中々入手困難だ。都内の輸入食品店を何か所か訪問したが、どこにも置いていない。通販で買えなくもないが、これだけのために商品代の倍近い送料を払うのもためらわれる。必要な材料が少ないので、使う分だけ自作しても良いかもしれない。余ったカラメルを飾りソースにして、オレンジとミントを添える。果物のカットはまだまだ練習が必要そう。


こちらがバーニャカウダ。

バーニャカウダとは「野菜のお風呂」という意味らしい。何とも可愛らしいではないか。イタリア料理でお馴染みのオリーブオイル、ガーリックに生クリームとアンチョビでコクと味を付ける。これが中々絶品で、エンドレスで野菜が摂れそうな味わいである。


そして最後にリゾット。先にスープを作っておき、バターで炒めた生米とオニオンに適宜注いていく。火加減は最初からやや強め。イタリア米を使っているからなのか、ジャポニカ米の「始めチョロチョロ」とは異なる理論である。

リゾットを作る際に大事なのは味見だと先生は仰っていた。とにかく適宜味見をすることで美味しく仕上がるらしい。生米は大きさの割に意外と火が通りにくいからなのだろうか。煮込みの中盤にポルチーニを投入し、芳醇な香りが教室中に広がる。トリュフに匹敵するぐらいの罪な香りだ。「適宜」を越えて「頻繁に」味見をしたくなる衝動との戦いであった。耐えに耐えて、終盤で1回目の味見。少し米が硬い状態で火を止め、余熱で柔らかくする。少し待って2回目の味見。うーん、アルデンテ。

面白かったのが、同じリゾットでも盛り方でトラットリア風とリストランテ風になることである。
平たいお皿に平たく盛るのがトラットリア風で、

高さのあるお皿に高く盛るのがリストランテ風。

冬に食べるなら、冷めにくそうなリストランテ風の方が良いかもしれない。


先生の盛り付け。

同じ料理でも盛り付け方ひとつで見栄えが随分異なる。こういう風に自分でも出来るようになれば良いなぁ。

来月はロンバルディア州だ。ミラノ風カツレツ(豚肉)とサフランリゾットは何度も作っているので、それ以外のレパートリーが増えるのが楽しみ。