Beauty & Chestnut

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薄暗い部屋とコーヒーとクオリア。

休日、夕飯を食べた後、軽く一眠りしようとしてそのまま夜中まで眠り込んでしまうことがよくある。横になる前に消してあった部屋の電気がより一層眠りを深いものとし、自然と目が覚めた後は大変すっきりしているのもだが、なんとなく時間を無駄にしてしまったような残念な気持ちになるのも事実である。とりあえず軽く伸びをしようと思い、天井に向かって手を伸ばしてみる。伸ばした手は薄暗い電灯が逆光を作り出し、黒い陰のように映る。それは異質な光景で、一瞬、異物のような自分の腕に驚く。

そのまま電気をつけずに、ベランダから外を眺めてみる。川を挟んだ向こう岸に見える高速道路。静まり返った空気の中に、車やバイクの音が響いてくる。あそこを走る車はどこから来て、どこに向かうのだろうか。ドライバーにしてみれば大きなお世話であるが、ふと勝手にドライバーのドラマを想像してしまう。
そして、私が夜に高速道路を使うのは大抵旅行帰りに空港から都心へ向かうバスに乗る時で、必然的に高速道路が旅を連想させるものとなっている。香りが記憶を呼び起こす事を「ブルースト効果」というらしいが、景観が記憶を呼び起こすことは何ていうのだろう。

そんな事を考えながら、部屋の電気をつけ、コーヒーを飲むためにお湯を沸かす。フィルターにお気に入りのコーヒー豆を入れ、沸騰したお湯を注ぐと、部屋中にコーヒーの良い香りが充満する。脳が匂いを感じるメカニズムを知っていても、コーヒーの香りを感じるクオリアは色あせず、むしろ対象が私にどのようなしくみで影響を与えるかをより深く知った事によって愛着のようなものを感じる。時に、現象を調べることによって事実が意外と現実的なもので、私をがっかりさせることもあるが、それでもクオリアは健在である。脳科学という分野はなかなか面白うそうだ。