Beauty & Chestnut

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嵐山

秋。京都。女一人旅。
響く鐘の音と読経の声。
暗くなってくるにつれて高まる寂寥感。

昨年の同じぐらいの時期に、私はこの町を訪れた。変わったのは、今年は少し肌寒いという事と、あと一つ。

見覚えのある風景。嵯峨嵐山駅からお店が並ぶメインストリートまで同じ道程たどる。そして野宮神社への道を背に、去年とは反対の方向に向かう。車折神社の角を曲がり、三条通を少し歩くと美味しい蕎麦屋がある。保津川がよく見える席に通され、蕎麦ご膳を注文。少しだけ、贅沢をしてみる。

大勢の観光客。路上に佇むたくましい車夫。緩やかに流れる保津川。写真撮影が絶えない渡月橋

それらを傍観しながら、ちぢにものこそ悲しけれ、な気分に浸り、蕎麦湯を一気に飲み干して、今度は野宮神社に向かう。竹林に入り、かばんの中から赤い紙製の小箱を取り出す。去年買ったお守りを、返そうと思った。片割れだけになってしまったが、お守り故に捨てる事が出来ず、かといって、持っていても仕方ない。

ついた頃、一足遅かったのか、お守りを売っている一角はすでに消灯されていて人がいなかった。さて、どうしたものか。私は再び小箱をかばんの中に戻し、お参りだけすることにした。

縁結びの神社では、私はいつもお願い事はしない事にしている。しても効果ないから、というわけではないが、人の縁なんて、自然に任せておくべきだと思う。出会う時に出会うべき人に、出会う。全て自分次第。神仏にどうこう頼むことではない。出会った結果がどうであれ、それ以上でもそれ以下でもなく、ただそういうものだ、と。

だけど柄にも無く、ちょっと奮発して賽銭箱に蕎麦のお釣りの100円玉を入れ、幸せになっていればいいなぁ、とお願いごとなのか単なる独り言なのか分からないが、目を閉じて呟いた。