Beauty & Chestnut

栗野美智子オフィシャルウェブサイト(笑)へようこそ。ツイッターもやってます。@Michiko_Kurino

週末起業サバイバル (藤井 孝一)

著者は「週末起業」という言葉を産み出した藤井孝一氏。この言葉自体はよく聞いたことがあるが、勝手に派生したものだと思っていた。

■雇われる生き方は危険!
著者は「日本を、起業家であふれる国にする」という使命のもと、6年前に「週末起業」を出版した。サラリーマンの置かれている状況は厳しく、給与は年々減額傾向にある。そこで著者は週末に出来る仕事をもう一つ持とう、と提案したのだ。その後、計らずとも世の中は不況になり「自力でご飯を食べていかざるを得ない人達」が出てきた。運よく会社に残れた人たちも「明日は我が身」と必死になってスキルアップに励んだ。しかし、著者は言う。スキルアップが活かされるのは、会社に所属しているからだ。もし憂き目にあった場合、そのスキルは社外では活かされないだろう。身に付けるべきものは自立するための知識と実践である、と。組織人として身を固めるのは確かに一見有意義であるが、組織の一部となればなるほど、共倒れした時のリスクも高まるのだ。

■副職のススメ
とはいえ、そんなに急に会社が潰れたりすることはないだろう。だから平日は通常の業務をこなしながら安定した収入を得て、週末だけ別の仕事をすればいい。だが、大体の人が、「別の仕事=アルバイト」と認識している。アルバイトは時間の切り売りにすぎず、平日の業務と同類項だ。誰かに雇われ、誰かの指示に従う。そして、それ以上の価値は生み出さない。本職は別にあるのだから、思い切って挑戦しなさい、とのこと。就業規則では週末起業はグレーな扱いになっているが、出来ることならバレないようにコッソリとやるように指南。会社にばれたら給与減額やリストラや左遷のリスクが懸念されるからだ。実にオトナなやり方である。

■まずは、1円から
さて、アルバイトではなく起業を勧めるのは、自分で稼ぐ能力を磨くことに理由がある。起業しようとしてもネタがない人は多いだろう。そこでまずは、インターネットを使ったビジネスが紹介されている。アフィリエイトだったりドロップシッピングだったり、「せどり」だったり。どれもそんなに儲かるものではないが、努力次第では数万円を稼ぐことが可能なようだ。誰かが用意したプラットフォームに登録して、簡単な操作をするだけだが、実際にそこからお金が産み出されるのを目の当たりにすると結構楽しかったりする。起業してお金を得るには何段階かの壁があり、最初の壁が「1円」なのだ。しかし、ゼロとイチの差は大きい。ゼロは何億何兆という数字を掛けても、所詮ゼロなのだから。

■エア起業することなかれ
「お金を儲ける」というのは「誰かからお金を頂くこと」を意味する。どんなに立派なビジネスプランが出来上がったとしても、行動に出なければ利益を生み出せない。考えるだけで行動に出ず、1円も稼げないことを著者は「エア起業は最悪だ」と警告している。ビジネスで儲けるためには経験と実践が不可欠なので、まずは週末起業でボランティアに近いビジネスを始め、実力がついてきたらお金をいただくやり方を提案している。ずっと「趣味だから、楽しいから、タダでいいや」という考えでは経営者として失格だ。趣味であっても起業する以上はビジネスである。ビジネスである以上、利益を出すことを目標としなければいけない。

■「××社のナントカという者です。」→「ナントカです。」
日本人のビジネスパーソンが海外で自己紹介するとき、まずは会社名から言うそうだ。特徴のないフツーの人がフツーの大学を出て運よく大手(の末端部門)に就職した場合、これは国内では大変有効である。こういう人は自発的に海外に出ることもないだろう。しかし何らかの業務で海外へ行くこととなった場合、全アイデンティティを所属する会社にゆだねてしまう。まことにご愁傷さま、だ。かたや、有能なビジネスパーソンや新進気鋭の若手起業家、世界を意識している人は自分自身に向き合う瞬間が必ず出てくる。「××社に勤めているけど、自分はこういう能力があって、こういう得意分野があって、こういう思想を持っている。そして、こういう事に貢献できる。」ということを主張しなければ相手にされない。グローバル化が進む現代は、個人が個人として強くなければならないのだ。それは起業する者にとっても同じ事が言える。たとえ部分的な時間に限られていても、起業して運営している時は××社の社員ではなくなるし、失敗しても会社は責任を取ってくれない。全て自分でやらなければならない。しかし、それによって得る果実は大変美味なもの・・・らしい。

■まぁ、とりあえずやってみれば?
起業したい、と言うと、半々ぐらいで反対する人が出てくる。こちらが丁寧に説明しても「やっぱり安定した人生を送るのが一番良い。」「起業して上手く行くのなら、みんな起業しているよ。」だ。安定した人生を送るのが良いか悪いかは個人の価値観の問題なので特に言及しないが、「儲かるならみんな起業しているよ」は間違いであることを最後に述べておこう。大抵の人は、やろうと思っても「やらない」のだから。