Beauty & Chestnut

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皇居Walker

東京駅丸の内北口を出ると広がる開放的でモダンな景色は、観光客に限らず普段都内で生活している者にとっても、訪れるたびに新鮮で何かしらの発見があるものだ。それは東京という都市が日夜更新されているから、というわけではなく、ここに来たら何か楽しいことでも起きるのではないか、と嬉しい予感をさせてくれるからなのかもしれない。また、来る者拒まずの雰囲気が、そう感じさせるのかもしれない。都市の玄関、東京駅に相応しい町並みである。

といっても、私は丸の内北口と、その反対の大丸のある改札口しか出ないので、東京駅を語るには経験が乏しいのも事実だ。何にせよ、待ち人を迎える東京駅、丸善丸の内に最も近い東京駅、イノダコーヒーに一杯飲みに行くための東京駅。東京駅に対するネガティブイメージを強いて挙げるとしたら、人を見送る東京駅、といったところだろうか。待ち人がいよいよ帰る時間になり、見送る時の寂寥感は居た堪れない。どうせしばらく来ないんだろう、と不貞腐れてしまうものだ。不貞腐れる、という言葉の「不貞」にドキっとした。語源は知らないが、この漢字を最初にあてはめた人は女性に違いない。もしくは女性に浮気された男性だろう。なぜなら不貞になれるのは女だけだから。男の不貞は「不貞」ではなく、「本能」である。なんちゃって。

北口を出て真っ直ぐに進むと、日比谷通りに出る。公園らしき風景が広がっているので、私はこれが日比谷公園なのだと長年思っていたが、どうやらそうではないらしい。日比谷公園でないと分かったのは、事前に皇居ランのコースを調べていた時に気付いただけで、どこからが皇居周りになるのかまで、はっきりと調べてこなかった。行けばランナーがいるはずだから、と地図を家に置いてきた。

信号を渡ったところに交番があったが、外国人でもない私が標準語で「皇居ってどこですか」ときけば不審極まりない。とりあえず突き当たりを右に曲がってみた。少し歩くと交差点があり、信号向かいに大手町駅があった。これから走るのであろうランナーらしい人達がチラホラを見え始め、彼らの向かう先を見てみたら、皇居ランナーと呼ばれる人達が走っているのが見えた。後は彼らに(歩いて)ついていけばいいだけである。反時計回りで皇居ウォークを開始したので、右側には都会の風景が、左側には緑豊かな風景が楽しめた。都心なので、建築物や、ちょっとしたオブジェなどを鑑賞できる。風が吹けば松の香りや何かの花の香り、耳を澄ませばランナーの生命力あふれる吐息や木の葉がさやさやと鳴る音、やや紫外線がきになるものの、木漏れ日にも癒される。多くの人が休日にまで都心にやってきて走る理由がなんとなく分かった。

この日は完全に1周したわけではなく、桜田門の手前から離脱して赤坂方面へ歩いたのだが、皇居周りには鑑賞ポイントが存在する。まずは竹橋付近。東京国立近代美術館のある辺りで、ポンピドゥセンターを彷彿させる建物が印象的。

橋のオブジェもモダンアートである。

竹橋を少し越えるとしばらくは緑豊かな風景が続く。三菱一号美術館のような煉瓦の建物がチラホラ見えたが、正確な場所までは覚えていない。煉瓦って都会の風景にも合うものだが、周りが緑でも映えるものだな、と思ったのを覚えている。しばらく歩くと半蔵門の方へ出た。

以前ブログで赤坂陰影礼賛という記事を書いた時に掲載したワコールのビルがあり、「そうか、皇居に近かったんだ。あの時もうちょっと足を伸ばせば良かったな」と思った。国立劇場憲政記念館を過ぎ、厳つい要塞のような建物が見えた。この強面の建築こそが警視庁で、見る者に「あぁなるほどな」と思わせる。

竹橋のポンピドゥーセンター風の建物にはまだ愛らしさがあるが、こちらには「リサとガスパール」のリサはまず住まないに違いない。警視庁の手前の大きなY字路で、私は皇居ランコースを離脱した。

国会議事堂を抜け、溜池山王へ出て、そのまま赤坂へ向かう。朝早くに家を出たが、陽射しが強くなってきていたために、赤坂で少し買い物をした後はすぐに帰宅した。春から初夏、または晩夏から秋にかけて歩くコースとして、皇居周りほど他に良い所はないだろう。お洒落なランナーの服装を見るも良し、風景を楽しむも良し、自然に癒されるのも良し。皇居ラン(またはウォーク)の楽しみ方はほぼ無限大である。